ある日突然、それはやってきた。まずい、ともかくまずい、比喩ではなく「砂を噛む」ような感じでした。言葉に表すことのできない不思議な感覚で「砂を食べている」「ゴムを食べている」ような感じで、食事は苦痛そのものでした。
ただでさえ、痩せているのに体重がへってしまったので、無理やり食べていました。さすがに我慢できなくなって病院へ行くことにしました。
味覚障害でした。
味覚障害ってどんな感じ?
①味覚減退: 味覚が低下した状態、味を感じにくくなる 。
②無味症: 全く味を感じない。
③自発性味覚異常: 何も口に入っていないのに味を感じる。
④乖離(かいり)性味覚障害: 特定の味覚(特に甘味)だけを感じない。
⑤異味症: 本来の味と違う味を感じる。
⑥悪味症: 何を食べてもおいしく感じられない。
私の場合は、⑤か⑥でしょうか?
味覚障害の原因
1.加齢による味蕾は減少・委縮
老化とともにこの味蕾は減少・委縮することが分かっており、高齢者の味蕾の数は新生児の3分の1にまで減少するといわれています。よって味が感じにくくなることは生理現象であるともいえます。
2.食生活偏りによる亜鉛が不足
亜鉛が不足すると味蕾細胞の新陳代謝が起こりにくくなり、味蕾の働きが悪くなります。味蕾は体の中でも新陳代謝の活発な部位であり、亜鉛が不足すると一番に影響をうける場所であると言われています。食品添加物の多い食品は亜鉛の吸収を妨げるものもあるので、ここ最近若者に味覚障害が増えているのはそれも原因として考えられます。
3.口腔・のどの病気による味覚障害
舌炎やカゼによる咽頭炎等、口腔・のどの病気でも味覚障害が起きます。また、シェーグレン症候群など唾液分泌が低下し、口内が乾燥すると味覚障害を来します。この場合、唾液の分泌を促進する薬や人工唾液を使用します。喫煙も味覚に悪い影響を与えます。
4.脳の障害による味覚の感覚神経へのダメージ
舌を支配している神経や脳の味覚をつかさどる部位が障害された場合です。
5.風邪などによる嗅覚の低下
味覚と嗅覚は密接な関係にあります。そのため、鼻づまりなどで嗅覚が低下すると味がわからなくなることがあるのです。
6.薬の副作用
血圧を下げる薬、抗生剤、抗アレルギー剤や向精神薬などの長期服用によって起こされる可能性があります。これらの薬に含まれる成分と食物中の亜鉛がくっついてしまい、亜鉛が吸収されなくなることにより亜鉛不足となってしまうのです。また、味覚障害は抗がん剤の副作用でも起こります。これは、抗がん剤によって舌の味蕾そのものや神経が障害を受けることで起こります。
7.心因性のもの
味覚はあくまで脳が感じているものなので、味覚は心因的な要素に影響を受けやすいといえます。日常生活に支障をきたしている場合はカウンセリングが有効な場合があります。
原因で思い当たるものは全くありませんでした。味覚障害になったのは若い頃の話ですので、加齢でもなく、7月頃で風邪もひいていませんでした。
味覚障害のとき何科を受診したらいい?
①耳鼻咽喉科:味覚だけに異常があり他にはこれといった症状がない
②内科:糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の持病がある
③心療内科(精神科):味覚以外にも体の不調を感じる
④歯科・口腔外科:虫歯などの治療中である
⑤味覚外来:症状が深刻な場合・専門医に診察してほしい
何科を受診したらいいのか、わからなかったので、とりあえず総合病院の予約をしながら、受付で確認しました。
とりあえず、耳鼻咽喉科で他の科の受診が必要なら回してくれるとのことでした。こういう時は総合病院は便利です。
治療法なし?
味覚障害の治療薬として認可されているものは、今のところありません。味覚障害の約7割は亜鉛欠乏が関係しているとされており、亜鉛製剤を処方されることがほとんどです。実際に、亜鉛製剤を3~6か月服用した患者の6~7割ほどに味覚障害の改善がみられたとの報告もあります。
治らないかも?
治療法は亜鉛を飲むことだけでした。亜鉛を飲んで効果がなかったら、もうどうすることも出来ないと言われました。味覚障害は治らないこともあるそうです。
症状がでてしばらく放っておくと、さらに治る可能性が低くなるともいっていました。
料理は、料理本の調味料の分量通りにしました。家族は何も言いませんでしたが、味噌汁などは適当に作っていたので、濃いときや薄いときがあったと思います。
ある日突然気が付いた!
だんだん物凄いまずさに慣れたころ(実際はまずいものをすばやく食べることが習慣になったころ)、突然気が付きました。あまり、まずくないかも? 亜鉛を飲み続けて2か月ほど立っていました。
まずいと思いこんで素早く食べていたので、ひょっとしたら少し前からよくなっていたが、気が付かなかった。それに突然気が付いたという感覚でした。
まずくないと思うと不思議と感覚が戻ってきたような気がしました。そうしていつの間にか元に戻りました。
あれから数十年たちましたが、特に症状はなく、思い起こしても原因は全くわかりません。